Home 日本の心 一人ひとりに合わせた味を提供する"味噌ソムリエ"
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sommelier1豊永美代子(とよなが・みよこ)氏

昭和30年創業「味噌の丸定」の名物女将。人呼んで「味噌ソムリエ」。ねじりはちまきに半纏姿で毎日お店に立つ女将の人柄に惹かれ、幾度となくお店に通うお客さんも多い。


『僕のためにお味噌汁を作ってくれないか?』。これはいち時期のプロポーズの定番フレーズだ。ふたりの一大イベントの幕開けに"味噌"という言葉が使われていることからも、私たちの日常生活にお味噌が深く関わっていることがわかる。最近では日本発の健康食材として海外でも注目を浴びているお味噌。日本を代表する食文化であるお味噌を、50年以上にわたって販売している「味噌の丸定」(東京・亀戸)にうかがった。

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一度でいいから"本物のお味噌"を食べてほしい

sommelier3東京は亀戸。下町が持つ独特の空気をいまだ残す街。商店街に入るとすぐに「味噌の丸定」の看板が見えてくる。お店に入る前から漂ってくるお味噌のいい香りに懐かしさを感じるのは日本人の性なのだろうか。
「でもね、最近は海外でもお味噌がブームになってるらしくて、こないだはウクライナの人が『ボルシチにお味噌を』とか『ヨーグルトといっしょに生クリームを塗って……』なんてことも言いながらお店に来たよ。面白いもんだねぇ」
国々で慣れ親しんだ食べ方があるだろうから、その人なりの自由な楽しみ方をしてほしいという豊永さん。さて日本の若者はというと"自分なりのお味噌の食べ方"がない。お味噌で味つけをされた料理を食べていても、お味噌そのものへのこだわりはそう強くないようだ。日本古来から伝わる伝統的な食材の魅力に気づくべきでは?
「身近な食べ物なんだから"気づく"っていうのもそもそもおかしな話なんだけどね。まぁしょうがない部分もあるよ。うちみたいなお味噌の専門店も少なくなっちゃったし、スーパーに行けばインスタントのお味噌が簡単に買えるからさ。いや、そういうのを食べるのがダメってわけじゃないよ。ただ、それがお味噌のすべてだとは思ってほしくないねぇ」
昨今のスローフードや健康ブームによって、お味噌の魅力が見直されているとはいえ、専門店にまで足を運ぶ人はけっして多くない。ただ、味・おいしさ・素材のよさを、豊永さんのようなお味噌マスターとの会話を含めて楽しむことが、日本文化を見直すひとつの手段にならないだろうか。

 

お味噌ほど日本人の心に根づいている食材はない

sommelier4ここでお味噌の歴史を振り返ってみる。飛鳥時代に中国大陸からわたってきたといわれるお味噌は、その後しばらくの間は寺院や貴族階級で楽しまれるぜいたく品だった。室町時代になって庶民の間で少しずつ自然醸造が始まり、江戸時代になると商業的に作られるようになっていった。
大豆、米、麦、そして食塩と水。これらの原料を蒸したり煮たりしたものに細菌(酵母菌)を加え、樽の中で寝かせて発酵・熟成させる。大地に育まれたお味噌は、全国の気候や風土、食習慣や好みに合わせて、さまざまな顔を持つことになる。
「ほら、昔から『手前味噌』とか『みそっかす』とか『そこがミソなんだよ!』といった"味噌"を使ったことわざや言い回しも多いじゃない。まさに大衆生活に根づいていた証拠だよ」
豊永さんはお客さんの出身地、食生活などから味の好みを把握し、"その人だけのオリジナルお味噌"を作ってくれる。お店を訪れたり、注文を受けたお客さん一人ひとりの好みをもとに、その人が一番求める味噌を作ってあげるのだ。その次に注文が届いたときも好みの配合は頭の中にしっかり記憶されている。まさに"お味噌ソムリエ"という呼び名がふさわしい。
「そんなたいそうなもんじゃないけどねぇ(笑)。でも最近じゃお客さんの顔を見ただけで"その人の味噌"がわかるようになったよ。学生さんでもお勤め帰りのサラリーマンでも、私はいつでもここで待ってるからさ。気軽に声をかけてほしいね!」
最後に、時代を超えていまなお日本食の基本食材になっているお味噌への想いをうかがった。
「私はね、お味噌といっしょに私の心も買ってもらっていると思ってる。おかげさまで日本全国に丸定のファンが増えてるけれど、できれば日本にとどまらず世界中の人にこの魅力を知ってほしいね。お味噌ほどおいしくて、安くて、健康的な食材はないんだからさ!」
古来から受け継がれている日本文化としての味噌。"老舗の味"を楽しむのに素晴らしいお店を発見した。

TEXT:筒井健二(KENJI TSUTSUI) PHOTO:平林克己(KATSUMI HIRABAYASHI)

「味噌の丸定」
東京都江東区亀戸3-60-18 03-3682-5437
営業時間:9:00~19:30 定休日:第2、第4日曜日

 
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